有識者によるiDeCoのコラム

第9回
法改正でますます拡充
2022年からiDeCoはどう変わる?

iDeCoは2016年の法改正によって加入者範囲が、公務員などを含む原則60歳未満の国民年金被保険者にまで広がったため、「誰でも利用できる老後資産形成制度」として広く知られるようになりました。強力な税制面での恩典も後押しし、約180万人の加入者がすでに利用しています。
そして、2020年の法改正によってiDeCoは利用できる人や期間がさらに充実することになりました。

iDeCoの加入可能年齢の拡大【2022年5月~】

一番注目されているのは、 原則65歳になるまで加入できるようになるという点です。
現在は加入可能年齢が60歳になるまでと決められていますが、今回の法改正ではこの年齢要件が撤廃され、国民年金被保険者ということだけが加入の主な要件となりました(ただし、iDeCoの老齢給付金を受給した方、公的年金を65歳前に繰上げ受給した方を除きます。)。

iDeCoの加入可能年齢の拡大

つまり、60歳以上でも国民年金被保険者であれば加入できるようになったのです。
具体的には60歳以降も会社員や公務員といったサラリーマンとして働く65歳未満の方、それから任意加入被保険者として国民年金に加入している65歳未満の方も新たに加入できるようになります。

任意加入というのは、自分の意思で任意に国民年金に加入し保険料を納めることを言いますが、大きく2つのケースがあります。
ひとつは国民年金が満額もらえる保険料納付済期間が40年に達していない方が、60歳以降も加入継続を希望するケース。
もうひとつは海外に居住している日本国民が老後に国民年金を受け取れるよう加入を希望するケースがあります。今回これらの方もiDeCoに加入可能となります。

しかし、何といっても60代前半のサラリーマンの方がiDeCoに加入できるようになることが対象人数の面からも大きな改正点です。
利用者目線で考えてみても、
①老後資産が積み増しできる、②掛金の所得控除が受けられる、③50代に新規加入することのデメリットが消滅する、といったメリットがあります。

これらのメリットを具体的に数字で考えてみましょう。例えば月額2.3万円を積み立てるのであれば、 ①5年間で 138万円+運用益分、老後資産が増えます。
②そしてその間、所得税率がたとえ5%だったとしても、所得税と住民税(10%)をあわせて年間約4万円、5年間で20万円もの税負担軽減効果があります。
③現在は、50歳以降でiDeCoに新規加入すると60歳時点の通算加入者等期間が10年ないため、60歳で受け取ることができず加入と受け取りの間の空白期間が生まれてしまいます。そうすると、その間は掛金の所得控除メリットがない中、口座管理料を負担しつつ、残高の運用を継続するしかありませんでした。

今回の改正によって50代のうちに加入し、受給開始年齢に達するまで加入し続ければ、この空白の期間は消滅します。老後資金をラストスパートをかけて準備したい50代にはこちらも朗報です。

企業型確定拠出年金とiDeCoの同時加入要件の緩和【2022年10月~】

現在のiDeCoは原則60歳未満の国民年金被保険者が加入可能となっていますが、企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」という)に加入している約750万人の人は、ほぼiDeCoに加入できませんでした。

それは、企業型DCの会社掛金の上限をiDeCoの拠出限度額分引き下げる労使合意、規約の変更がされていないと、iDeCoとの同時加入が認められていなかったからです。今回、このような要件なしに、本人の意思だけでiDeCoの利用が選択できるようになります。

具体的には、企業型DCの会社掛金に本人が掛金を上乗せ拠出することができるマッチング拠出とiDeCoを同じ人が同時に利用はできませんが、それ以外であれば基本的にiDeCoと企業型DCに同時に加入することができます。

同時加入する際のiDeCoの拠出限度額は次の2つのルールを満たす範囲までとなります。
①企業年金の有無に応じたiDeCoの限度額以内
②企業型DCの会社掛金とiDeCoの掛金の合計が、企業型DCの限度額以内

限度額以外にも費用や商品といった違いがありますので、その比較ポイントをまとめてみました。会社掛金が低くマッチング拠出の上限も低い若いうちはiDeCoで、その後マッチングを利用し、資産も企業型へまとめるといったことも可能です。

企業型確定拠出年金加入者のマッチングとiDeCo同時加入の比較

iDeCoの受け取り開始可能年齢が75歳まで拡大【2022年4月~】

現在iDeCoの受け取り開始時期は、60歳以降70歳になるまでの間で選ぶことが可能ですが、その選択の幅が60歳から75歳になるまでに拡大されます。公的年金の繰下げが75歳になるまで可能になることもあり、多様化する働き方・暮らし方に合わせられるような制度変更となっています。

受け取り開始時期の選択肢の拡大

ただ、私は公的年金とiDeCoはその役割が違うと考えており、iDeCoの受け取りを遅らせることには否定的です。公的年金は繰下げすれば、ひと月遅らせる毎に0.7%確実に年間受取額が増え、それが生きている限り支給されるのですから、長生きに備える意味で公的年金の繰下げは大いに利用すべきだと思います。

一方iDeCoは、受け取り時期を遅らせると、その間、非課税で運用を継続できるとは言うものの、口座管理料を負担しなければなりませんから、その分受取額が減っていきます。

老後の安心のために公的年金は繰り下げ、それまでのつなぎ資金としてiDeCoはその前に受け取る、というのが経済合理的な受け取り方かと私は思います。

さらに、合理的に受け取るためには、60歳前に、iDeCoや公的年金だけでなく、会社の退職金や小規模企業共済といった他の老後資金となる制度も合わせて、いつからどのような形で受け取るかいくつかのパターンを比較検討してみることをオススメいたします。
その際には、税や社会保険料負担の額だけでなく、60歳以降の暮らしに必要な資金の手当てという側面を大切にベストな受け取りパターンをご検討ください。

今回の2020年改正でますます利用の選択肢が広がったiDeCo、その魅力を知ってご自身の豊かな老後のためにうまく役立てていただきたいと心から願っています。

※ 当コラムに掲載されている内容は、2020年12月現在のものであり、今後の制度改正等により内容に齟齬が生じることがあります。
※ 当コラムは、執筆者の個人的な見解にもとづいて書かれたものであり、国民年金基金連合会としての見解を示すものではありません。
※ 当コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。
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>確定拠出年金アナリスト 大江 加代先生
講師
大江 加代先生

PROFILE

確定拠出年金アナリスト
大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、実際に約25万人の投資教育も主導、制度や運用だけではなく、実務に最も詳しい専門家の一人。NPO法人確定拠出年金教育協会理事として、月間15万人以上が利用する「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及活動も行っている。社会保障審議会企業年金個人年金部会委員 株式会社オフィス・リベルタス取締役。

主な著書: 「図解 知識ゼロからはじめるiDeCoの入門書」(ソシム社)

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