有識者によるiDeCoのコラム

第2回
人生100年時代のiDeCo

最強の老後資産の形成手段「iDeCo」で将来の安心を手に入れる

iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者が2018年8月に100万人を突破しました。2017年1月に公務員や専業主婦(夫)も加入が可能となる改革が実施されてから20カ月で、30万人程度だったiDeCoの加入者が3倍超に増加したことになります。毎月3万人ほどの方が新規で加入し続けているiDeCoには、やはり、それだけの魅力があるといえます。「老後のための資産形成には最強の金融商品」といわれるiDeCoの魅力について、他の金融商品と比較して確認してみましょう。

iDeCoには3つのメリットがあります。掛金の拠出時、運用時、そして受取時の3段階で税制優遇のメリットが受けられます。この3段階で税優遇のメリットが受けられる金融商品は他になく、しかも、このメリットは、かなりまとまった金額になります。モーニングスターの「iDeCoガイド」※1には、その場で結果がすぐ出る「節税シミュレーション」がありますので、現在の年齢と毎月の掛金、そして、運用利回り(0%~8%程度で任意)を入れて計算してみてください。拠出時、運用時の節税メリットだけでも100万円を超えることも少なくありません。

※1:モーニングスターの「iDeCoガイド」は、こちらからご参照ください。< https://ideco.morningstar.co.jp/ >

掛金の拠出時の控除を生命保険や損害保険と比較

iDeCoは、毎月の掛金が全額所得控除の対象になります。毎月の掛金は、職場によって異なりますが、たとえば、公務員の場合は年間14.4万円(月額1.2万円)、職場に企業年金がない会社員は年間27.6万円(月額2.3万円)が上限になります。掛金が課税所得から差し引かれ、所得税や住民税の納付額が少なくなります。

所得税控除比較

似たような所得控除で、保険料控除があります。年間払い込んだ保険料の金額に応じて所得税や住民税の還付を受けられる制度です。生命保険料控除の場合、一般、年金、介護の3つの保険、それぞれに払込保険料に応じて控除が受けられます。所得税については、各々控除額の上限4万円で合計12万円の控除が受けられます。損害保険(地震保険料控除)は所得税の控除額上限が5万円です。保険料控除は払い込んだ保険料が高額になっても控除額に上限がありますが、iDeCoは「全額」ですから大きなメリットになります。

運用時の非課税は「NISA(少額投資非課税制度)」と同じ

iDeCoでは、運用時の収益にかかる税金が非課税になります。一般の銀行・証券口座で投資信託を購入し、値上がり益や分配金などで儲かった場合は、その20.315%(所得税+住民税+復興特別所得税)※2 の税金が課税されます。「NISA(少額投資非課税制度)」は、毎年120万円の非課税投資枠が設定され、株式・投資信託等の配当・譲渡益等が5年間にわたって非課税となります(トータル枠は600万円)。「つみたてNISA」では毎年40万円で投資信託に投資ができ、20年間にわたって非課税メリットが受けられます(トータルで800万円)。

※2 : 源泉分離課税 20.315%は、2018年12月現在のものです。

所得税控除比較

※NISAは、5年の非課税期間終了後、ロールオーバーを選択することで 非課税で運用できる期間が10年になります。
※つみたてNISAは、開始する年によって非課税額が変わります。上記は、2018年から始めた場合の非課税額となります。

iDeCoは、預金や投資信託などで掛金を運用しますが、その預金や投資信託から得られた収益に税金がかかりません。しかも、iDeCoを長年続けていると、運用資金はどんどん大きくなりますが、iDeCoとして運用している限りは、収益の非課税メリットが享受できます。運用時の非課税は、iDeCoとNISAは同じです。

受取時の控除は退職金等との組み合わせで考える

iDeCoは、受取時には「退職所得控除」(一時金の場合)、「公的年金等控除」(年金受取の場合)が受けられます。これは、他に退職一時金や企業年金等の受け取りがある場合は、合算して考えなければなりません。受取時に、自分のメリットを考えて上手に受け取る方法を考えましょう。途中で転職することもあるでしょうし、退職年齢をいつにするかなど、将来のことはその時でないとわかりません。受け取る時にじっくり考えましょう。

株式投資信託をiDeCoで使うからこそ得られる効果

「節税シミュレーション」でも設定した「運用利回り」について考えてみます。運用利回りの想定を0%~8%程度としました。8%は、金融庁が「つみたてNISA早わかりガイドブック」で示している試算を参考にしました。世界の株式・債券に分散投資して1985年から20年間、毎月一定金額を積み立てた場合、スタート時期によって結果は異なるのですが、運用成果を年率に直すと2%~8%の間になりました。20年間継続すると2%以下になることがなかったことがポイントです。毎月一定額を継続的に積み上げると、株式のような値動きのある資産を選択する効果が大きく出ます。株式は値下がりもしますが、その際は同じ金額でより多くの量を購入できます。1年~5年という比較的短い期間で止めずに、20年以上にわたって積み立てれば、積み立てた金額以上の見返りがあるものです。

最後に、iDeCoは「60歳になるまで引き出せない」という制約があります。60歳まで引き出せないからこそ、老後の資産をしっかり形成できるとも言えますが、「60歳まで」とは随分気が遠く感じられる方もいるでしょう。その場合、まず「つみたてNISA」を始めましょう。こちらは、いつでも引き出せます。「つみたてNISA」でまとまった資金ができたら、iDeCoに切り替える、または、iDeCoを並行して始めましょう。NISAとiDeCoは同時に利用できます。iDeCoは、60歳以降の老後に備えるお金というしっかりした目的を持って始めることが重要です。

税制優遇メリットをしっかり受け取りながら、長期に大きく成長する資産を積み立てるというiDeCoのダイナミックな資産形成効果を、1日も早く取り入れて、将来の安心を手に入れてほしいと思います。

なお、これほど魅力的なiDeCoを中小企業(従業員100名以下)の企業年金として活用する方法があります。従業員のiDeCoの掛金に企業が上乗せして拠出する制度になります。制度の名前は「iDeCo+(イデコプラス)」です。大切な従業員の退職後の生活にプラスαの年金を提供する制度として、事業主の方々には是非検討していただきたいと思います。

※ 当コラムに掲載されている内容は、2018年12月25日現在のものであり、今後の制度改正等により内容に齟齬が生じることがあります。
※ 当コラムは、執筆者の個人的な見解にもとづいて書かれたものであり、国民年金基金連合会としての見解を示すものではありません。
※ 当コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。
※ 当コラムに掲載されている内容(情報、画像、デザインなど)の著作権は、原則としてすべて当連合会に帰属します。したがって、当連合会の許諾を得ることなく使用(複製、転用、転載、改変、修正など)することを禁止します。

>モーニングスター代表取締役社 朝倉智也先生
講師
朝倉 智也先生

PROFILE

モーニングスター 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得 (MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努めるとともに、各上場企業には、戦略的IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)のサポートも行っている。他にSBIグループ各社の重要な役員を兼任する。

主な著書:『「iDeCo(イデコ)」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『ものすごく真っ当で、ありえないほど簡単な お金の増やし方』(幻冬舎)、『怖がりの人ほど成功する! 丸投げ投資生活』(ナツメ社)など。

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